2009年12月30日水曜日

チェーン・カッターの不具合


 ネットでチェーンカッターをオーダーし、届いたモノは不良品だと思う。気の小さい私は、調整の方法を尋ねる口実で販売元に電話してみた。通常のカッターより数倍高いモノを買ったわけで愛着のわく製品であって欲しいとの思いもあった。私は道具フェチなのかも知れない。プロが使う道具類は何を見ても美しいと思う。子供の頃、靴屋の息子と仲が良くてちょくちょく靴屋の店先に出向いたが、そこの親父が使っている靴の修理道具に魅せられた。店の奥のカウンターでそこのオジサンがプロ用のエプロンをして、ノミを逆手に持って厚手の革底をそぎ落としていた。靴を逆さまにセットする台座や各種の工具類が雑然とおかれていたが、どれを取ってもきちんと手入れされ鈍く美しく輝いていた。

 建築現場に行けば、道具箱に入った大工道具も美しい。使い込まれた道具には大工たちの魂が宿っているような気がして、道具箱を跨ぐようなことはしないし、触るのも憚られる威厳さえ感じる。「道具を大切に扱わない奴にはいい仕事は出来ねーんだよ」と昔どこかの大工が言ってたっけ。自らのロード・バイクの整備には、そんな美しい道具を使いたいと思っている。プロ仕様のモノはそれなりに頑丈な造りであり、年月が経てばそれなりに美しく汚れていってくれるものだ。常に愛情をもって使い込んでゆきたいのだ。

 電話口で状況を説明し、私の言ってることが判るように、切断した余分なチェーンを含め送り返すこととなり、即刻宅配便で送り返した。次の日に担当者から電話が入り製品を作ったメーカーに話をしたら現物を見たいとのことで、販売店からメーカーに郵送するとのこと。聞けば、自転車に詳しい他の従業員も「こんなの見たことない」との事で不良品である可能性が高いとのこと。そして十日ほどたったころ、新品の製品が事務所に届いた。見れば、寸分の狂いもなく押し金のピンが、チェーンのピンのど真ん中に当たる本来のきちんとした製品であった。

 コンピュータや自転車関連の部品については、電話での使い方や不具合について懇切丁寧に色々教えてくれる。私のコンピュータはマックだが、これだけ色々な機能が付いていれば100%使いこなすのは無理だ。どこかに不具合があってもそれが不具合に起因することさえ判らないことがある。電話で尋ねれば、実に懇切丁寧に1時間以上平気で付き合ってくれる。何とも頼もしいサービスであるが、シマノのサービス・センターもそうだった。ハンドルに取り付いているデュアル・コントロール・レバーについて問い合わせたところ「そのようなクレームは聞いたことがないので新たな製品と交換します」との嬉しい申し出を何度か経験している。今回のチェーンカッターにしても、気分良く新品と交換してもらった。自転車に素人だからといって遠慮することはない。電話口で気後れする必要もない。親切に色々教えてくれるし、遠慮せずにドンドン電話したらいいのだ。

2009年12月27日日曜日

チェーンリングの分解と洗浄


 先日、チェーンを交換した際、クランク側のギア、チェーンリングの分解と洗浄を試みた。クランク部分は、見た目にも後輪のスプロケットやディレイラー絡みの作りよりも遙かに単純に見える。それだけに分解も簡単だろうなんて思っていたが、あにはからんや、そうでもなかった。

 後先も考えず、闇雲に5ミリの6角レンチでクランク側の一番大きいギアを外しに掛かった。結構ガッツリ締め付けられていて、かなりの力が必要だった。ギア、クランク、ペダルが一体となって回転を始めちゃうんで、それを押さえながら6角レンチで緩める。きっと何かコツがいるんだろうな、なんて思いながら緩めるのだ。クランクに5本のビスで緊結されているチェーン・リングは、それなりに強固に固定されているのだと理解し、この手のボルトは星形に緩めたり締め付けたりするのが常識で、その辺の常識を思い出して一汗かいたのだ。全部のピンが外れると、大中小の3枚のチェーンリングの内、中、大の二枚が外れたが、大きい方のみクランクとペダルの間から抜けてくれたが、中型は外れてくれず宙ぶらりんになった。本来ならば、先ずペダルを外すんだろうが、わたしはペダルを外すための専用工具(15ミリのレンチ)は持ち合わせていないので、そのまま付けっぱなしでやった。

 6角レンチだけで外せると思っていたら、途中から裏側のナットが一緒に回り始め、っとここでペグスパナが必要なんだと気付き、持ち出して使ってみたが、なかなか上手くホールドできない。私のロード・バイクには3枚のチェーン・リングがついているために、ホールドすべきナットにきちんとペグスパナをセットしにくい。ペグスパナはもう少し改良の余地が在るようなー、の文句も言いたくなる。

 分解・組み込みの為に必要な専用工具は後輪と同じように必要で、あらかじめ買ってあったので分解を始めたのだが、下手すれば途中でおっぽり出したくなる。クランク部分のチェーン・リング3枚を分解するのは、後輪のスプロケットより厄介なことが徐々に判ってくる。多分、慣れてくればそうでもないんだろう、なんて思いながら、左側のペダルが付いたままのクランクを外しにかかる。

 先ず、芯部分のカバー・キャップを外すダラー・コインほどの大きさの専用工具が必要だ。左クランクを外す為に5ミリのアーレンキーでボルトを緩めておかないとキャップは外れない。それを知らない私は、最初にこのキャップを外すべく不毛なイライラを募らせた。メンテナンスを紹介する本をきちんと読んで始めればいいモノを、そうしない短気が原因しての間違いではある。このダラー・コインは、単体でも売ってるようだが、ブラケット外しの工具に付随している。ブラケットまで外すつもりはないが、後々の事を考えてこっちの方を買い求めてあった。大型のプライヤーまで持ち出して回したが回らないので、メンテナンス本をチェックしたところ、クランクのボルトを緩めない限り外れないことを知ったのだ。あまりのバカさ加減に自己嫌悪に陥った。で、手元のメンテナンス本にも言及がなく注意しなければいけないのが2個のワッシャーだ。このクランク周りにはプラスティックのワッシャーのようなものが2つあることだ。分解中に落としてなくなると厄介なモノだと思う。ここまで来ると、時間がなかったりすると、徐々にイライラが募ってくる。自分のバカさ加減に辟易しながら、ここで止めるわけにはいかない。メンテ本を読み直し、その指示に従って事を進めると左側のクランクが難なく外れ、右側のクランクも問題なく引き抜くことが出来た。あーやっとここまで来たって感じ。

 クランク側の分解・解体は、単純ではないのだ。いや単純なのかも知れないが、思ってもみないような面倒が発生すると言うこと。ボルトやナットも思った以上の力を必要とする反面、チェーンリングのよう単体にすると簡単に曲がったり壊れてしまいそうで、ヤワに見える部品にダメージを与えないような気遣いが必要で、これが疲れるのだ。

 分解したクランク側の3枚の歯車を洗浄液できれいにするのはさして面倒なこともなくきれいに出来る。終わったところで組み立てだ。分解したときと逆のプロセスで進めば難なく出来るが、ボルトを付けるときには、焼き付き防止とゆるみ止めのためにグリスが必要との記述があるのだが、手元にグリスがないので後日グリスを買い求めやり直すこととした。なんと、始めてな事もあって1時間ほど掛かってしまった。立ったりしゃがんだり、妙な格好で外れにくいボルトを外したり、締め付けたりで、神経も体力も消耗した。やっぱりショップにお願いして、作業中は外でタバコでも吸って待っていた方が、結果的には早いし、確実だし、余計な工具も買う必要もないので間違いなく安上がりでもある。

 が、しかし、自分でやってみると自転車の設計者や職人としての作り手の考え方や工夫が良く判る。歯車の歯と歯の間に人智の工夫の跡が見えるのだ。多分、年一回の5,000㎞ 毎にしかやらないであろう、分解しての洗浄ではある。悪戦苦闘の末にきれいになった愛車を見て、作り手側と使っている側とのコミュニケーションが成立したような感じであり、何となく笑みが広がり、買ったばかりの新品とちがって、愛おしく感じちゃったりするのだ。油にまみれた黒々したスプロケットが光り輝き、歯車の消耗具合や単なる工業製品ではないアルミの地金を見ると「又やってみよう」なんて思っちゃうんですよ。




2009年12月24日木曜日

クラスの女の子がチャリンコで来た。



 「先生、教室まで自転車で来てるんですね。私もなんです」と嬉しいことを言ってくれる女性が、私の担当する某大学の建築設計製図のクラスにいた。彼女が乗ってるチャリは、クロス・バイクとの話だったが見るとMTBだった。なんと10年前に5万で買ったもので、殆ど整備されてなく、チェーンはうっすらと錆が付いていた。チェックするとチョット伸びていて既に十分交換時期を過ぎている。聞けば自宅は千歳船橋だという。私の居る経堂の隣駅ではないか。片道15㎞を超えるところからの通学ではある。スクーリングの三日間だけとは言え、往復で30数キロ走っていることになるが、別にその距離を苦にしているようには見えない。

 一日目の授業が終わって、表参道の私の事務所のあるところまで一緒に帰ることにして、比較的ゆっくりと走り始めたが、危険なので後ろに付いてくるように言ったにもかかわらず、併走するような走りになってしまった。ちょっと危ないとの思いで、踏み込んで走り始めたところ、何の問題もなく付いてきた。実に気楽に自転車に乗ってて、後ろから何やかんやと話しかけてくる。赤信号で止まれば、隣に来てニコニコしながら喋る。ヘルメットも被らず、大きめのバッグを肩から斜めがけに、長い髪をセクシーにかき上げ楽しそうにしている。流石にチャリンコ歴十年の事だけはあるのだ。3年チョットの私の経験以上で、私の大先輩ではある。

 2日目は遅刻気味で、始業前に教室のテラスから前の道路を見てたら、黒の半ズボンで颯爽と教室のあるビルの前に到着し、駐輪した。上から見ていると遅刻ぎりぎりにもかかわらず、隣のローソンに向かい、出席を取り始めると彼女だけ返事がない。隣の学生からチャリンコの子です、とのこと。さっきローソンに出かけたのを上から見てたし、遅刻もしてない出席扱いとした。どうやらトイレで着替えてたみたい。気付いたときには普通のジーンズに着替えていた。授業の後は表参道で友達と会うとのことで、同じく後ろに付いてきた。私は普通に走ったが、問題なく付いてきたとは言え、昨日同様、やはり麻布の交差点からの登りでは少々の遅れを取っていた。

 三日目は、彼女に先に行かせ私は後に付いた。「じゃーね」と別れの挨拶の後、勝手に帰ってもらったのだが、私は後について走ってみた。彼女、困ったことに、なかなかやってくれちゃうのよね。「赤でも行けるのは自転車の特権ですよね」などとほざいていた通り、赤信号は無視。後ろからついて行くと、車が混み始めると平気で歩道を走る。そうなると私はついて行けず、六本木ヒルズの所で見失ってしまった。履いてる靴はヒールの高いサンダル風な奴。ジーンズの裾から女性らしいサンダルがのぞき、いたって安易にチャリンコに乗っている。ヘルメットも被らず、自由奔放にチャリを操るこの手のおネーちゃんが、我々真面目なロード・バイク族には迷惑なんだよね。困ったもんだ。

 今の世の中、男女同権ではある事は当然のことであり、男だから、女だからで評を下すことはない。ただ、同権ではあるが同種ではない。生物学的な男女の差は、それぞれが持つ価値観や才能などでも違いがでる。建築の設計製図を教える立場にもある私ではあるが、デザインについての感性はおしなべて女性の方が高いが詰めが甘いとも言える。建築のデザインは女性に向いているような印象を持っているが、詰めが甘い分、拘り方が甘く、おおざっぱな所がある。男はその点、妙なところにやたらに拘り、その拘っている事の自覚がない。やたらに几帳面で細かいのは、圧倒的に男子学生に多い。

 ロード・バイクに拘りを持つのはほとんど男性だ。著名な建築家にハゲはいないが自転車好きにハゲは多い。その辺の不思議について、とある場所で、失礼千万にも自転車界では著名な疋田智氏に質問してみた。彼は完璧なハゲ(誠に失礼)である。「そんな質問、受けたの初めてだなー」の困惑の末「単なる偶然だと思う、とは言え、確かに多い」との言を得た。私流の解釈では、頭髪は女性ホルモンに関わっているので、女性的な素養が備わっているデザイン系の仕事で著名な人には少なく、反面、自転車を含めカメラやオーディオなど機械、電気モノが好きな人種には男性ホルモンが多く、頭髪が薄くなりハゲが多いとの解釈だ。どうだろう、間違ってますかね。私は男性ホルモン過多のハゲに近く、本来は建築の設計には向いていないとも言えるメカ好きな自転車大好き人間ではある。



2009年12月22日火曜日

チェーン交換


 ネットでオーダーしたチェーンとチェーンカッターが届いた。チェーンは「SHIMANO 105 CN-5600 116LINKS チェーン 10-SPEED」、チェーンカッターは最高級品とされる木製ハンドルの「シマノ TL-CN32 ハイグレード チェーンカッター」を奮発した。仕事中にもかかわらず、待っていられない性分の私は即梱包を開き中身をチェック。見ると美しくも鈍い輝きを放つチェーンと1個のチェーン結合ピンが入っている。カッターの方はチェーンほどの美しさは放っていないとは言え、一生モノの重厚と言うほどではないが、大切に使える風情があって、何となく満足。

 届いたチェーンのコマ数を数えてみると外側58コマが内側の58コマに繋がれ、都合116コマだ。長いのか短いのか、現在の愛車に装着されている長さと同じなのか判らない。後で比較してみようと思う。カッターの方は2つに分解されて送られてきている。説明書を見ると「チェーン切りのグリップのなかには、スペアピンが2本収納されてます」とある。ネジキャップを外してみると中から黒い2本のピンが出てきた。見ると明らかにチェーンのコネクティングピントは違う。なんだこれ?と思うまもなくチェーンのピンを押し込んでゆくときのカッター側の押し出しピンの予備であることが判った。ということは、チェーンを繋ぐのは一発勝負であることが判明し少々の不安を感じた。チェーンのコネクト・ピンは、チェーンに付属して来た1個だけなのだ。

 ちょいと仕事を中断して、愛車をスタンドにセットして既存のチェーンにカッターをセットし、恐る恐るハンドルを回してゆくと、押し出して行くべきコネクティングピンの頭にカッターのピンが正確に中心にない。約1ミリ左にずれている。大丈夫かなーとの思いを無視して回してゆくと、結構な力が必要で木製ハンドル・バーの大きさの意味が実感できる。まーいいかとの思いで、なおも回してゆくとブチッという音と共に木製ハンドルが軽くなった。おーはずれたか、で、外れた。カッターをチェーンから取り外すと、無情にも両サイドのチェーンが下に垂れ下がった。「もう走れない」状態が目前に出現し、かなり不安。

 早々にチェーン全てを抜き取り、黒い油汚れしたべたべたの手でチェーンを空のペットボトルに入れ、洗浄液を適当に入れ振り回し洗浄してみた。別にそのまま捨てちゃってもいい使い古したチェーンではあるが、既存のチェーンのコマ数を数える必要があるのと、この中古のチェーンでキーホルダーでも造りたいとの下心があったからだ。

 「先生(私は事務所では先生と呼ばれている)、仕事してください」などと事務所のお姉ちゃんに言われても、止めるわけには行かないのだ。なにしろこのままでは今夜、ウチに帰れない。完全に油分が洗浄されたチェーンを数えてみると、54 x 2 108コマだった。新品の方は4つ都合8コマ分長い。同じ長さに切断する必要がある。練習がてら切ってみると先ほどと同じようで押し出しピンが左にずれている。まーこのくらいはいいんだろうと学習しているのでそのまま押し込み上手いこと切断できた。

 いよいよ愛車にセッティングするが、これが結構面倒くさい。なかなか前後のディレーラーに通ってくれない。また手を黒く油だらけにしてどうやら通した。繋ぐべき両端のチェーンを合わせ、1本しかない、新たなコネクト・ピンを手で半分差し込んだ所で、先ほど切断したのと同じような手だてで、カッターのピンを軽く押し当て準備完了。本締めに入る。ゆっくりとハンドルバーを回し始めた。とたん。パチンの音と共にコネクティングピンが、所定の位置に入る前に、折れた。やっちゃった。これはもう無理だ。「何よこれ、やっぱカッターの製品不良じゃないの」の声に「先生、仕事!」。やっぱ、左に1ミリほどの芯ずれが原因だと理解した。スペアーはない。慌てていつものショップへ電話を入れ、状況を説明し、コネクティング・ピンは売っているのかを聞いた所。笑いながら「はい、沢山売ってます」とのこと。即刻、ショップに走った。「仕事しなくていいんですか?」の声は無視。

 チェーン結合ピンとして一袋5本入りでシマノ純正のモノが売られていた。短い鉛筆の芯程のモノが5本で¥729.-だ。結構高いなーの印象だが余裕を持って2袋購入し、仕事が終わってからの夜にやらなくて良かったの思いを胸に、事務所に戻った。

 同じ過ちは避けたいので、カッターの調整ができないかを見たが、調整機能はないみたい。カッターに挟み込んで、右に左にチェーンを引っ張ってもチェーンは動いてくれない。付いているガイド・レールのようなモノが外れるので外して強引に右に引っ張りながら回してみることとした。これなら行けるかもの根拠のない自信を糧に再挑戦。はい、どうにか入りました。これで今晩は帰れる事となり、一安心。早々ペダルを回してみると妙な音がする。チェーンがどこかにぶつかっている。ん?間違った。後部ディレイラーのプーリーの所で、本来のチェーンの通過する位置が内側なのに、外側になっている。ガーンである。やり直し。「先生、仕事!」。再びチェーンを切り、再度注意深くチェーンを装着し、結合し直した。ったく、なんてこった。「仕事しますよ、すりゃーイイんでしょ。後でね」。

 で、チェーンを巻き直すときにフロントの歯車の汚れが気になった。10,000㎞を超えて走っているが一度も取り外して洗浄していない。ついでだ、一丁やっちゃえ、で分解を始めてしまった。小一時間、悪戦苦闘の末に買ったばかりのごとくに綺麗になった。先週末に後輪のスプロケットは分解洗浄しておいたので、後輪部のスプロケットは綺麗なままだ。チェーンが新品となり、前の3枚のギアも光り輝いている。チェーンにドライ・タイプのチェーン用のオイルを注ぎ駆動関係のギアとチェーンは完全に清掃・メンテナンスが終了した。さて、今晩の帰りの走りはどんな風に改善されるのだろう。「はい、仕事します」。

 夜、乗り始めて、直ぐに違いが実感できた。明らかにペダリングが柔らかいのだ。何だか信じられない程にシルキーな感じ。今夜の走りを経験すると今朝までの走りはごつごつした感じだったように思う。なんだかスプロケットがお餅で出来てるみたいにソフトなのだ。へー、こうも違うのね、という印象。入りにくかったギアも今夜は比較的入りやすくなっている。確かに改善されている。後輪のスプロケットを分解、洗浄しただけでは、忘れていた入りにくかったギアが顕著に入りにくくなっただけの事ではあったが、チェーンを取り替えクランク部分のギアを洗浄するとこんなにも違うのに驚いてしまった。

 今回学習したことは、チェーンの交換やギヤの分解・洗浄は5,000㎞ 毎にやりましょう、ってことかな。私は倍の10,000 Km走っちゃったけど。初めてだとチョット面倒だけど、次からは早いだろう。次の日、使い古しのチェーンを使ってキーホルダーを作った。「ネー、これいいでしょ。あげる」、「先生、いい加減にしてください」と、かつての私の教え子のお姉ちゃんに叱られてしまった。

 

 

2009年8月20日木曜日

走行時間、今朝は24分台



 実は253秒で、25分台なんだけど、3秒の超過に納得が行かない。あくまで24分台を主張したい。この歳になってくると自分自身に甘いと言うか、自分自身にさえ見栄を張りたくなる。張らしてちょうだい。はい、24分台です。

 早かった。最近は28分とか29分、時に30分を超えるようなタイムで、冬の寒い時期とはいえ、何となく元気がないのだ。体調が少しでも悪かったり、気力に陰りが出ると直ぐに30分近いタイムしか出ない。サイクル・コンピュータの数値は正直で、微妙なところでの体調、気力の度合いがそのまま数値になって現れる。概して冬場はタイムが上がらない。夏場に比べ平均すると1分ほど遅いような気がする。

 久々に出た24分台ではあるのだ。このタイムは気力体力共に申し分ない状況の時にしか出ない数値だ。なんでこの調子が悪いときに、こんなタイムが出たのかには理由がある。今朝は、私を追い越していったチャリンコの後に続いたのだ。引っ張って貰った感じで、後に続いて追いかけたのだ。紅いロード・バイクに跨る、黒のレーシング・パンツのお兄ちゃんだった。「っとー、恐れ多くも畏くも、私を抜いて行くとは失礼な」とばかりにペダルをこいでしまったのだ。しかし、このお兄ちゃん、なかなかに、立派だった。

 当たり前の事ではあるが基本的に左側しか走行せず、赤信号では左足のビンディングを外し、きちんと足を付いて停車する。たとえ誰も歩いてない単なる横断歩道の信号機でもである。正直、私は信号無視で行っちゃうような歩行者専用の誰もいない信号機の所である。車の流れに乗ってのかなりのスピードではあるが、走行中、車の前に出るときにはきちんと右手を出して後続車に自分が前に出ることをアピールする。それも私が追っている10分ほどの間に2度もやった。信号で止まって斜め後ろに停車した私はディレイラーなどチェックしたが、私のモノより明らかに安価なモノが取り付いていた。それが、きちんと整備され、スプロケットの歯車群もきれいにメンテの後が伺え、チェーンと共に燻し銀の如くに鈍く光っている。クランク側のチェーン・リングは2枚で、インナーが大きい、競技者が好んで使う、53-39Tのノーマルギアだった。自転車も一見するとクロモリの、アチコチに小さなキズも見受けられるような、使い込んでる旧式のモノで今流行のカーボンなどではない。ビンディングの金具も、何万もするような形のモノではなく、学生さん向けのモノであることが判る。

 きちんとヘルメットを被り、淡島通りを車の流れと共に走る。明らかに早いのだ。後ろ姿しか判らないが、年の頃は30才は超えているような感じで、精悍を感じさせる後ろ姿なのだ。さして若くもないが、まことにもって爽やかな走りで、私は必死に追走したのだ。淡島通りの始まる前の住宅街の通りから環7を超えて環6近くまでの間、全ての赤信号で止まりながら、1台の紅いロード・バイクが軽快に走る後ろを、中年のオッさんが遮二無二追いかけたのだ。環6を前方に見る頃には、いつの間にか姿が消えてしまったが、実に気持ちのいいライダーではあった。あのような走りを手本として毎日の通勤をしなくてはいけないのだと、殊勝にも思ってしまったのだ。

 若い坊やたちが駆るロード・バイクやピスト・バイクには目に余るモノが少なくない。平気で右側の車線に走り込んだり、歩道に乗り上げて走ったりと、縦横無尽に勝手な走りをする。私のように道交法遵守を基本に走っている自転車などには目もくれず、ヘルメットも被らないで実に勝手なのだ。不愉快きわまりない連中が多い中、この日の朝は実に爽やかではあった。

 そんなお兄チャンを追っかけて走った末に、事務所に到着してサイクル・コンピュータをチェックしたのだ。2503秒、・・・。24分台だった。

 

 

いいことずくめの自転車通勤



 毎朝、毎晩、油のついた汚い格好で、ロード・バイク(自転車)に跨って通勤してみませんか。冬の寒いときには鼻水垂らして、夏の暑いときには大汗を飛ばしながら、通勤時間を遊ぶんです。

 私は自宅と職場の間、8.5キロの道のりを二十数分で走ります。駅まで歩いて電車を利用すると倍の四十数分かかります。住まいは東京の世田谷区の経堂と呼ばれる所、仕事場の事務所は都心の表参道にあります。建築の設計を業として建築設計事務所を主宰している、御年59才である。車などでの通勤より早いですし、ガソリン代や駐車場代も必要ありませんので、ズーと安上がりでもあります。使うエネルギーは私自身の体脂肪です。二酸化炭素の排出もありませんので、かなりエコロジカルでもあります。

 血糖値が高くて食事制限を強いられてる方、メタポとやらでお腹周りを気にしてる方、ご心配は入りません。自転車を走らせるには、気づかぬウチにかなりのエネルギーを消費していますので自転車通勤を始めると徐々に体重が減ってきます。私は自転車通勤を始めて、5キロほど減ってそのままを維持してます。食事に気を使う必要は全くありません。毎日食べたいものを、食べたいだけ食べて問題ないんです。しかも、リバウンドはありません。私、自慢じゃないですけど血糖値は430あったんです。今はチョット高めの160ですから、全く問題ないですね。血糖値なんて、自転車通勤を始めれば1ヶ月以内に劇的に落ちます。

 ゴルフや野球、テニスやサッカーに熱中している方もいらっしゃると思いますが、多くても週一回の運動でしょ。週一回の運動は、単に週一回の疲労でしかないですね。毎週末疲れるようなことしてたら、健康的どころか長生きはできませんよ。人間の筋肉って、三日以内の連続の場合には、筋肉が成長してゆくんですって。週一回とはそういう意味でも単なる疲労で、精神的にはいいかもしれないけど、健康上はお薦めできるモノではないですよ。だいたい毎週の運動を楽しみにして雨でも降れば中止じゃないですか。無論、自転車だって雨の時には乗りませんけど、三日続けて雨なんてことは滅多にないですもん。苦しみながらのランニングや義務感から続ける運動など長続きしないでしょう。イチローも言ってるじゃないですか「継続は力なり」って、毎日のように継続的に軽度の有酸素運動が健康の秘訣です。

 自転車は、座ってやるスポーツです。私のように物ぐさ者には持ってこいで、疲れたらそのまま座ってればいいんです。坂道を下るときにはペダルなんか踏まないですもん。楽ちんなもんです。上りだって、今の自転車はギアが少なくとも8段、通常のロードバイクは20段か30段もあります。普通の車が上れるような勾配の坂道は難なく登れます。自転車は跳んだり跳ねたりしませんから、膝や足首に瞬間的に全体重が掛かるようなことはないんで、痛める心配もありません。ボールを投げたり受けたりもしないので運動神経のなさを露呈しなくてもいいんです。腰を回したり腕を振り上げたりの無理な動きもありませんので、身体を壊すような事にはならないんです。全くの運動音痴な私や体力が落ちてきている人には最適と言えます。「通勤」ですから運動の為に時間を割く必要はないんです。痴漢に間違われないようにラッシュの電車に乗る憂鬱から解放されるし、ドアー・トゥー・ドアを一切歩かなくていいんですよ。楽ちんこの上ないんですから。

 通勤は一人ですから全てマイペースです。パートナーやチーム・メンバーのことを考えて無理するようなこともないし、全くの気ままです。時にスピードを出すとは言え、クールな判断力とそこそこの良識を持って車道を走ります。交通ルールはあるわけでその範囲の中で、知的な走りが要求され、スマートに飛ばす喜びがそこにあります。サイクル・コンピュータという二千円程度のスピード・メーターを取り付ければ、毎回の走行時間を秒単位で知ることができます。今までにないタイムが出れば「っとー、記録更新の世界新だ」と楽しみが増し、毎日の励みにもなるわけです。

 自転車は、それ自体にエネルギー源を持つ「機械」ではなく、エネルギー源を持たない「道具」のカテゴリーに入るモノと言えます。基本的には中学生程度の物理学的知識があれば、何で自転車は倒れないのかに始まって、テコや歯車の原理、空気抵抗やタイヤと路面の摩擦抵抗、等々の知的好奇心を解明する楽しみも得られます。コンピュータなんかと違って全ての機構が露出してて、明確に理解でき、分解・再生する楽しみもあるんです。ロード・バイクとはそう言うモノです。服を油で汚しながらメンテナンスで遊ぶんです。

 毎日、楽しくもない職場の机に座ってなきゃならないご同輩、朝晩の通勤ぐらいは楽しんでも罰は当たらないですから。健康的な上に、知的でエコロジカルでエコノミカルな自転車通勤は、絶対にお薦めです。

はじめに (自転車)




 自転車に乗って3年も通勤していると、自転車のなんたるかがだんだん判ってくる。メンテナンスに関連する書籍などを読んだり、ネットで色々調べたりするウチに、全ての自転車に共通することなのか、ロード・バイクだけに限ったことなのか、私のバイクだけの特殊性なのか、等々が判ってきて自転車一般の知識として頭の中が整理されてくる。

  メンテナンス本の記述なども、マウンテン・バイクの場合とロード・バイクの場合とでは、何がどう違うのか理解でき、混乱や不安もなくページをめくれるようになる。3年前のロード・バイクを買った当初は、何がどうなっているのか、私の自転車は特殊なのか一般論として書いてあるモノなのかが理解できなかった。その辺の不安もあって、自分の自転車をいじくるのが恐かった。シマノとカンパニョーロの違いさえ判っていなかった。何しろ、エイッ、ヤー、で30万を超えるような自転車を買ってしまったのだ。判らないのは当然であった。

 この本は、既にロード・バイクに乗っている方を対象に書かせていただいている。特にメカに関する部分では、既に自転車に関する用語のなんたるかをご理解いただいていることを前提とさせていただいた。とは言っても、私自身、未だ素人の域を出ていないわけで、人様にお教えするようなことは何も書いていない。自分の無理解、思い違いをここで暴露し、同じような悩みを持つ方とその悩みを共有するのは意味のあることではないかと考えての事だ。3年の乗車経験から来る老婆心な独り言ともいえるが、自転車に詳しい人の本となると、読んでいてその尺度の違いから、良く判らないことが多いのも事実である。ロード・バイクを買ったばかりで不安を抱えながら乗っている方にとっても、今後の参考にはなると思う。

 一応、初心者としての小学生の域を超え、中学生あたりになった方々には共感いただける事が書かれている、と思っていただきたい。全くの小学生が読んでも「もう少し経つと私もこういう疑問にぶつかるのね」的なことがらで、人のおバカを楽しめる。専門用語などが出てきて混乱しても、なんとなく判りますから、大丈夫、先ずは自転車通勤の薦めからです。